第零章

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   きりっ。  うん。様になっているね朔夜さん。格好いいよ。銀縁から覗く黒曜石のような瞳に心奪われて受けの子がフォーリンラブしてくれたら万々歳なのだが、そうなると残念ながら朔夜は真顔であしらうのだろう。近年稀に見る堅物だし。  現場の説明は不要だろう。後ろ手に縛られて机の脚にくくりつけられている栗色の髪の可愛らしい男の子は、ようやく訪れた助けに涙をぼろぼろと流している。安心したのだろう。先程の助けてを発した時からだろうが、口にはシャツを突っ込まれていた。それを取り囲んでいるのは、五人の体格の良い大男である。 「強姦……未遂みたいだな。とりあえず安心した。それで? 言い訳があるなら耳を傾けるが」  目を細めてめちゃくちゃ不機嫌そうな朔夜は、硬直している大男五人を責め立てるように順々に視線を流した。すると、今まで俯いて沈黙を貫いていた大男の内の一人が、ゆらゆらと頭を上げた。その顔には笑みが貼り付けられている。 「へ、もとはと言やあコイツが悪いんだぜ? コイツがあんな男に靡いたりするから……」  つまるところ嫉妬か。醜いけどおいし……違う違う! 「結局コイツはあんなチャラチャラした男に抱かれて……。あんだけ止めとけって言ったのに何でだよ! 何であんな奴なんだよ!」  どうやら愛故の、とかそういう流れらしい。不謹慎だがおいしい。  
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