第二章

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  「違う! だって僕なんかじゃ会長に相応しくないから……っ!」 「違いません。あなたは臆病だから、会長からはっきりと拒絶されることがただ怖いだけです。だからこうして水面下でしか動けない。違いますか?」  雨宮親衛隊長はどうやら自身の発言にもダメージを受けてたらしいし、もちろん僕の言葉にもダメージを受けたらしい。握り締めた拳が、ここから見ても分かるほど赤くなっている。  いや、相応しいと思うけどね。何か会長と並んで歩いてたら兄弟みたいだろうし。金髪碧眼の王子系兄弟みたいな。  はっとしたように握り締めた自身の手をほどくと、雨宮親衛隊長はその場で背筋を伸ばした。 「……っ、僕は自分で言ったことは曲げない主義だから、今日ここで制裁には踏み切らない。だけど、今度会長に何かしたら絶対に許さないから!」  どうやら見逃してくれるらしかった。そろそろ虐め過ぎたかしら。でも僕が言ったことは間違ってなかったと思うし、だから雨宮親衛隊長は何も言わずこうして見逃してくれたのだろう。  地面が芝生だから大して音もしないのだが、それでは雰囲気が出ない為効果音はざっざっ、みたいな革靴と地面とが擦れる感じの音を各自で脳内補完してくれると助かる。それで遠ざかっていく雨宮親衛隊長とその他親衛隊の皆様の背中を思い浮かべてくれたら、それでこの場面は八割説明がついたことになる。  とりあえず、窮地は脱したことをここに宣言しておくか。 「社君、怪我は?」 「俺は大丈夫だけど、湊がっ!」 「掠り傷です。問題ありません」  ドヤァ……。  
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