第二章

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   完全な肯定が得られるとは想定していないにしろ、社君はきっと否定されるとは思ってもみなかったのだろう。社君なりに雨宮親衛隊長を気遣っての発言だろうし、社君は根本的に優しい人間だから放っておけなかったはずだ。 「雨宮親衛隊長がジレンマの最中で悶々としていようと僕には関係ありませんが、ただ、社君が不用意に手を差し伸べるのは違うと思います」 「な、何で!? 俺は黎司にも楽しく毎日を送って欲しいから……」 「雨宮親衛隊長はそれを本当に望んでいますか? 真の意味で彼を救ってあげることが出来ると、そう断言出来ますか?」 「それは……分かんないけど、一人で抱え込んでいるよりずっとマシなはずだ!」  ……人間皆が皆、君みたいな思考を持ち合わせているわけじゃないんだよ。  社君みたいな人類皆兄弟的思考の王道主人公にはありがちなことだが、無闇やたらと他人の悩みに関与するのは双方の破滅に繋がると断言しておこう。僕ってば王道信者だけどリアリストだから、その辺りはなかなかシビアだぜ。 「彼にはああすることしか出来なかったんです。彼の言葉の意味、分かりますか?」  雨宮親衛隊長は不器用な人間なのだろう。社君並みに。ただ、社君とは正反対の不器用。言いたいことは沢山あるけど、それを伝える為にどう動けばいいのかが分からないっていうあの状況。単純な話だ。  
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