第二章

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   世間一般の倫理を振りかざして説教しちゃったけど、雨宮親衛隊長みたいな人間は嫌いじゃないんだ。  憧れのあの人に近付きたいけど、あの人に近付くことであの人の価値を自分が損なってしまったらどうしよう。あの人が自分を拒絶したら自分はどう生きていけばいいんだろう。そんな所か。本当に好きだから、振られたら立ち直れない。どこか中学生の初恋に似ている。  会長が好きだから、会長を損なう可能性は全て排除する。自分だって会長を損なってしまってはいけないから遠目から眺めているだけなのに、自分より優れていない者が会長に接近することが許せない。エゴイズムと言えば分かりやすいか。相手を思うあまりってのは嫌いじゃないぜ。片思いって胸がきゅんきゅんするもん。  だから社君みたいなのが無遠慮に突っ込んでいったら、詭弁めいた自己弁護で塗り固めているだけの雨宮親衛隊長は確実に駄目になってしまう。会長の為、が会長の為になっていないことを指摘されただけであの動揺っぷりだ。僕の啖呵にはそうとうキレそうになっていたに違いない。 「雨宮親衛隊長は確かに間違っているかもしれませんが、そのことに自身で気付いて悔い改めなければ意味が無いんです。社君が今、何も考えずに雨宮親衛隊長を全否定してしまえば、彼はきっと立ち直れないでしょうね」  僕も散々好き勝手言ったし、あまり偉そうなことを堂々と語れる立場ではないが。  
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