第二章

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   社君は黙って話を聞いてくれていた。王道主人公は人の話を聞かない設定のはずなのだが、何だ、おかしいな、目の前の王道主人公にはきちんと学習能力と思考能力が備わっているっぽい。  無言で考えていた社君だったが、不意に顔を上げると、口許に笑みを湛えて首を縦に振った。 「そうだよな、黎司にも黎司の考えがあるんだもんな。黎司の答えを俺が簡単に否定したりしたら駄目だよな。ごめん、湊。俺、早く友達になりたいからってちょっと急ぎ過ぎてた」  ……物分かりの良い王道主人公っていいの? いや、あるいはこれは単に素直なだけなのか?  まぁいい。とりあえずは一件落着か。そろそろ授業が始まる時間だし、早い所二人と合流しなければ。 「分かって頂けたなら幸いです。では、そろそろここを出ましょう。授業も始まりますし」 「あーっ、まだ焼きそばパン全部食ってねぇのに!」 「仕方ないですね、待ってるから早く食べ──」  ゾクゾクッ! こっ、これは主に嫌な予感がしたときに背筋を這い上がるあの悪寒! つまり第六感がフィーバーナイツ! 今昼ですけどね! 喧しいわ! 「駄目じゃんか一条ちゃーん。俺らこの後黎ちゃんとヤる予定だったのに黎ちゃん帰らせちゃったらさー」  ニヤニヤ。ニヤニヤ。全部で七ニヤニヤ頂きました。気色が悪いです。忘れてたのってコイツらだったか。  
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