君に会いたい

6/14
5549人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「お腹空かないか?ルームサービスでも…」 「ううん…要らない。」 俯いてしまった亜弓の隣にゆっくりと腰掛ける。 「…どうしたの?」 優しく肩を抱き。 長い髪を上から下へ触れる。 「…別れたのよ。あの新郎と新婦。」 「え!?だってついこないだ…」 わざとらしくないように驚いてみせて、亜弓の顔を覗き込んだ。 亜弓がポツポツと話し出したのは俺が想像した通りの筋書き。 会社をクビになった晃は妻にも見限られ。 すっかり行き場をなくした。 追い討ちをかけるように週刊誌は発売され、晃を知る人は皆晃を白い目で見るようになる。 …もちろんその週刊誌は亜弓の手にも回ってきた。 その写真に酷く傷つき、吐き気まで覚えたという。 そして追いつめられた晃は、亜弓に救いを求めた。 自分をまだ好きでいてくれる。 亜弓ならば許してやり直してくれる。 そんな、淡い期待を抱きながら。 『お前しかいない』 『妻の事は愛してなかった』 『やり直して』 『愛してる』 晃の口から出る言葉は全て――― 「寒々しく聞こえたわ。」 亜弓は震える肩を自分で強く抱きしめ、唇を強く噛んだ。 次第に血が滲み出てきても亜弓はそれに気づかないみたいに。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!