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「…」
部屋に戻ってきた亜弓は、無言で窓の外を眺めていた。
その雰囲気に俺まで口を開く事ができない。
正直沈黙とは大嫌いなのだが、さっきあんな事があったんだ。
仕方ないな…。
小さくため息をついて沈黙に付き合ってやる事にした。
しかし、その沈黙を破ったのは亜弓だった。
「…もう、説明しなくても大体分かっちゃったよね?」
急に話し出した事にも驚いたが、あまりに明るい声に違和感を覚える。
「…ああ。新郎と付き合ってたんだろ?」
「付き合ってたわ。大学の頃から7年間ね。」
7年?
そんなに長く…。
「…あの人…晃も加賀谷建設の社員なの。若くして課長なのよ。…でもね、私は晃が大学の頃から一緒にいたの。あの人が入社したてでミスばかりしてきた頃から…ずっと互いを支え合って来た。」
「それなのに何故?」
「新婦は私の一つ下の後輩で…前から晃を狙ってた。出世株だと噂され始めた晃をね…。」
なるほど…エリートばかりが好きな女って事か。
「だけど…大丈夫だと思ってた。私と晃には7年という時間がある。お互いを理解し合って生きてきたんだもの。」
話しながら、亜弓は拳を強く握った。
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