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それというのも、今まで何回も間違い電話があったからだ。
…電話番号変えてくれないかな、エル。
「…違いますよ。うちは…」
『今すぐホストさんよこして下さい!!』
否定する俺の声もそもそも聞く気がないのか。
それくらい焦った声に、思わず絶句してしまう。
『えっと…とにかくエリートっぽく見える人!んと…眼鏡かけてて…高いスーツ来てて…そんな人いますよね!?』
「いや…だからうちは…」
『14時に〇〇ホテルのロビーで!そうだな…目印しにバラの花挿して来て下さい!!じゃ、よろしく!』
「いや、ちょっ!!!!」
プッ…プーップーッ…。
電話が切れた事を知らせる電子音だけが虚しく耳に響いた。
ゆっくり受話器を置いて、深いため息をつく。
「はぁ…なんなんだこの女は…。人の話しも聞かないで!!」
今更になって沸々と怒りが込み上げてきた。
しかし。
「…待てよ…?」
よくよく考えれば俺も失恋して暇だし、何だか訳ありそうな女の様子も好奇心をそそった。
暇つぶしにもなりそうだしな。
それに女の電話番号も分からないから断りようもないし。
何より面白そうじゃないか。
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