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そこは、この星の始まりの場所のように、生まれたてのままの姿。
見渡す限り青々と草木が生い茂る草原。
さんさんと照りつける太陽の下で、『コボルト』と呼ばれる子鬼の亜種と『ジャム』と呼ばれる粘度質の液体が何やら話しをしていた。
「なぁ、今日で何回目だ?」
コボルトは、小柄な体格には似合わない程立派な牙を、剥き出しにしながらジャムに話しかける。
「今日でって言うかよぉ、今日だけで四回目だべぇ。数えると限がねぇなぁ」
起用に液体を、指のように突き出しながら数を数えようとするジャム。
二人は草原に敷かれた一本の砂利道の果てを覗き込む。
「新人冒険者が初めて戦うのが俺たち」
「そんで、毎回打ちのめされるのもワシらだべぇ」
モヤモヤした思いと一緒に大きなため息をつく二人。
「この間やってきた新人冒険者なんかよぉ、俺の顔みてビビりやがって、棍棒で十回も殴りつけやがって! 三回で十分だって」
長く伸びた爪で額の傷を指し、ジャムに見せ付けるコボルト。
「そんなのまだマシだべぇ。ワシなんか、いきなり炎の魔法を使ってきやがった輩がいてよぉ、大火傷……新人は加減を知らんからのぉ」
起用に地面を這いずるジャム。
北の方角から心地よい風が二人を包み込む。
草がフラダンスをするかのように風と共に踊り出す。
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