0人が本棚に入れています
本棚に追加
鋭く尖った三日月が怪しい笑みを浮かべながら、黒く汚れた地上を見下ろしていた。
丑三つ時と聞くだけで、自分の周りに只ならぬ気配を感じる事がある。
そんな気配を振り切るかの如く、漆黒のアスファルトを叩くヒールの音が木霊する。
黒く長い髪をゴムで結い、サテンティアードのスカートをカジュアルに着こなす女。如何にもビジネス街で見かける
――今時のOL
と言った雰囲気を漂わせるその女。
女の肩には、「解る人にはわかる」であろう、イタリア製の黒い上質牛革を加工したシュリンクレザーバッグが大切そうに掛けられている。
女は、ヒールを鳴らすリズムを崩す事無く、今は電車が走ることなく静まりかえった高架下を歩いていた。
すると、女の背後から一台のスクーターが、近づいて来た。
最初のコメントを投稿しよう!