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静寂を押し殺し、冷静さの中にも狂気が滲み出るスクーターに乗る男……それは、まるでサバンナで獲物に狙いを定めるライオンの様だ。
顔が見えにくい深夜であっても、首から上を覆いつくすヘルメットを被った男。女の背後に近づくと、男は一気にエンジンを吹かし強引にカバンを掴んだ。
バランスを崩し倒れこむ女を尻目に、全速力でその場を去ろうとする男。
その時、女から奪い取ったカバンが大きく口を開いた途端、大蛇が獲物を喰うかの如く、男の頭を飲み込んだ。
前が見えず必死にカバンを取ろうとする男。
だが取れない!!
もがく男は、スクーターの方向感覚が定まらず、前方の電柱に頭から激突した。
外装が割れ、無残な姿になっているスクーターの横では、頭部を覆い尽くしたカバンの口からどす黒い液体が流れている。
すると女は、ピクリとも動かない男の下に跪きカバンを拾い上げた。
「アナタ ノ イノチ ハ イタダイタ……」
そう言い残し、女はカバンを再び肩に掛けると、夜の闇へと消えていった。
既に息絶えている男の傍らにあるゴミ箱から、顔を覗かせる新聞。
日付は、どうやら昨日のようだ。
『○○線高架下で、OLの女性がひったくりに会い、五十メートル引きずられ死亡』……
女性は、近辺に住んでおり、当時はサテンティアードのスカートに……
女性は、引きずられた際に所持していたカバンのベルトが首に巻きつき……
…………
END
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