0人が本棚に入れています
本棚に追加
余りにも完璧な笹川が穿いているチェック柄のスカートに、「糸くず」
なんと、滑稽な。
口頭で教えてあげるとしても、「どこ見てんのよ!」って変態扱いされそうだし……でも、気になって仕方がない。
イライラして寝れる訳がない。
よし! こうなったら、気づかれないように取ってあげよう。最悪、バレたらその時はその時だ。
俺の降ろされた指先から、目標の糸くずまでの距離……およそ五十センチ。
笹川に気づかれないように、もちろん彼女の周りの友達にも気づかれないように、俺は小刻みに震える手を伸ばしていく。
たった五十センチなのに、なんて遠いんだ。
糸くずを見ながら、時折、美しい美脚に視線が吸い寄せられる。
誘惑を心の中で振り切りながら、糸くずへ手を伸ばす。
もう少しっ……
その時、急に時間が止まったような感覚に襲われた。静まり返る俺の周りの空間。
顔を上げると、笹川と目線が繋がった……
俺の背中に冷たい物が滲みでる。
そして沈黙……
次の瞬間、俺の脳が、笹川の手によって揺れた……大きな衝撃音と共に。
床に崩れ落ちた際の体の痛みすら感じる余裕がなかった。
「ごめん! アンタの頬っぺたに蚊が止まってたから」
へっ!? ……そっか。
しかし、俺の苦労の五十センチが、たったの一瞬かよ……お前も変わらないなぁ、十一年前からよー。
おわりかよ……
new DecolinkParser().start('diary_body')
最初のコメントを投稿しよう!