その弐「糸くず」

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 余りにも完璧な笹川が穿いているチェック柄のスカートに、「糸くず」  なんと、滑稽な。  口頭で教えてあげるとしても、「どこ見てんのよ!」って変態扱いされそうだし……でも、気になって仕方がない。  イライラして寝れる訳がない。  よし! こうなったら、気づかれないように取ってあげよう。最悪、バレたらその時はその時だ。  俺の降ろされた指先から、目標の糸くずまでの距離……およそ五十センチ。  笹川に気づかれないように、もちろん彼女の周りの友達にも気づかれないように、俺は小刻みに震える手を伸ばしていく。  たった五十センチなのに、なんて遠いんだ。  糸くずを見ながら、時折、美しい美脚に視線が吸い寄せられる。  誘惑を心の中で振り切りながら、糸くずへ手を伸ばす。  もう少しっ……  その時、急に時間が止まったような感覚に襲われた。静まり返る俺の周りの空間。  顔を上げると、笹川と目線が繋がった……  俺の背中に冷たい物が滲みでる。  そして沈黙……  次の瞬間、俺の脳が、笹川の手によって揺れた……大きな衝撃音と共に。  床に崩れ落ちた際の体の痛みすら感じる余裕がなかった。  「ごめん! アンタの頬っぺたに蚊が止まってたから」  へっ!? ……そっか。  しかし、俺の苦労の五十センチが、たったの一瞬かよ……お前も変わらないなぁ、十一年前からよー。                        おわりかよ…… new DecolinkParser().start('diary_body')
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