一件目

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「神奈、仕事だ。」 1週間前にそう言ってきたのは、柳瀬だ。 神奈にA4サイズの封筒を渡すと、タバコに火をつける。 「柳瀬さん。禁煙したんじゃないの?」 神奈が柳瀬の背中を指で突くと、 「ん?やっぱ僕には無理みたい。 ギャンブルは止めてもタバコは止められないみたいだね」 禁煙すると言い出して3日も経たないこの日 早すぎる挫折に 神奈は目を細めるしかなかった。 「なんじゃそりゃ」 神奈の一言に柳瀬は、パーマのかかった栗毛を右手でかきあげるだけだった。
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