9033人が本棚に入れています
本棚に追加
/527ページ
「馨ちゃん、あたしと初めて会ったこと覚えてる?」
「ああ……もちろん。君が覚えて無くても、俺は忘れたことはない」
「それ!」
「え?」
「あたしも覚えてるの!でね、ここからが重要……謝らなきゃいけない事なんだけど。実はね、あの時会った男の子……えーと、馨ちゃんの事なんだけど、その子があたしの初恋なの」
「は?」
「だから!あの雨の日に会った子犬を拾ってた男の子に一目ぼれしたの、あたし。だけど、その後、その男の子を森村カオルと勘違いしちゃって……そのごめんなさい」
「……つまり、君の初恋の相手って……」
「えーーと、はい、その…」
俯きながら、あたしは目の前の男……馨の方を小さく指差した。
ちらりと目だけ動かして彼の表情を伺うと、目を見開き、とても驚いている馨と目が合って急いで目を伏せた。
ドクドク……この後の彼の反応が怖くて、心臓の動きが早くなる。
「て事は晶ちゃん……この前言ってくれた『初めて会った時から好き』て言う言葉は、あの雨の日の出会いの事を言ってたのか?」
あたしは俯きながら、コクンと首を縦に振る。
「晶ちゃん……あの時の君のセリフはホントなんだね。俺は信じてもいいんだね?」
少し気弱な表情で聞いてくる馨に、逆にあたしはびっくりした。
絶対呆れたり、怒ったりするもんだとばかり思ったから。
「馨ちゃん……何で呆れたり、怒ったりしないの?あたし、初恋の相手間違えちゃったんだよ?」
思わずべそをかいたような声が出てしまった。
よくよく考えれば、あたしがあそこで間違えなければ、今までの出来事はなかったかもしれない。
知らず、人の人生を変えてしまった事に、あたしが落ち込んでいると、両手を顔に添えられて顔を上向かせられ、馨とばっちし目が合ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!