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「そんな事で怒る訳ないだろ?君の初恋の相手が俺って聞いて、正直嬉しくて堪らない。だけど、重要なのは、今、君が俺を好きだって事だ。
頼むから、もう一回言ってくれるか?長い間片思いしてたから、実感が沸かないんだ。俺の夢じゃないって信じさせてくれ」
ジッと見つめられ、強請るように懇願されてしまった。
あたしはここは正念場だという事に気づき、腹を括った。
「う、うん……初めて馨ちゃんの事見たとき、綺麗な男の子だなぁて思って、でね、子犬を凄く大切に抱きしめてるところ見て、凄く優しい子だなぁ…て思ったの。
それから、馨ちゃんが綺麗な女の人……妹さんだって知らなかったけど、抱き合ってる姿見て、凄くショックだった。
その後すぐに誘拐されて、馨ちゃんが来てくれたでしょ?その時、凄く嬉しかった。でも、馨ちゃんがその後暴力受けてる所見て、めちゃくちゃ悲しかった。
ただ、見てるだけの自分が歯がゆくて……絶対助かって欲しかった……自分と代わってもいいくらい、あたしの事よりも馨ちゃんに助かって欲しかった。
そこで、気がついたんだ……ああ、あたし、馨ちゃんが好きなんだなぁって」
あたしはこの恥ずかしいセリフを一気に馨に向けて話した。
たぶん、止まったら二度と口には出せないと思ったから、でも、馨には自分の気持ちが伝わるよう真剣に言ったつもりだ。
言った後、二人の間に沈黙が流れる。
え……このまま放置プレイはちょっと精神的に無理なんだけど。
居た堪れなさに、視線を下に向けながら、彼の言葉を待った。
……のだが、言葉より先に、馨はあたしの頬に顔を寄せて、そっと唇を落とした。
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