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『 めぢからけて? 』
何気ない言葉で、
上の空だった私は、
その声のしたほうへ
焦点を合わせ、
もう一度発せられた
「めぢからけて?」
という、高めのアルトな声に
ハッとした。
そこにいた人物…
少年くんが指をなぞるように
読みあげた先には…
『助けて』
と何度もなぞられた、
私の無意識の
S0Sが書いてあり、
思わず足で一蹴する。
「なんでもないのよ」
と言って、
ランドセルに手をかけると、
体ごと半回転させ
トンと背中を押し
「ガキんちょは寄り道しないで帰りな」
と言って、
口角をつり上げただけの
口元をそのままに、
私も反転する。
そして、手だけ振る。
ジャリッと
少年くんが振り返ったような、
砂利の音がしたからだ。
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