プロローグ

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「ほら、麻樹の好きなお菓子だぞ」 僕は独り言を言っているわけではない。 僕の最後の恋人、麻樹の墓に話しかけている。 返事はもちろん聞こえない。 墓の周りにはまだ何も供えられていない。 どうやら僕が1番だったみたいだ。 「麻樹、そっちは淋しくないか?」 しゃがみこんで話しかける。 麻樹の返事はもちろんない。 僕は墓を撫でながら笑った。 「あら、優ちゃん?」 後ろから声がした。 「……おばさん」 振り向くと麻樹のおばさんとおじさんがいた。 「早いわね。もう1年すぎたのね……麻樹が亡くなって」 おばさんは麻樹のお墓を見ながら、しみじみと言う。 僕はだまってうなずいた。 麻樹がいなくなって……。 僕はここまでよく立ち直れたなぁと、改めて実感する。 麻樹がこの世を去ってしまった後、僕は脱け殻のようになってしまった。 麻樹がいなくなることは、覚悟できていたはずなのに。 実際に存在するのとしないのではまったく違った。
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