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あの後
初めて、ひとりでクリスマスを過ごした。
初めて、ひとりで正月を過ごした。
そして、飲まず食わずの生活が続いた。何を食べても味がしない。喉も渇かない。
ただ、部屋に閉じこもり、ボーッと過ごす毎日。
タクや千鶴も心配して家に来た。
だけど、誰もひと言も「学校に来い」だなんて言わなかったんだ。
僕のおふくろもおやじも、言わなかった。
僕は夜になると麻樹の幻覚をよく見ていた。
僕のベットの上に麻樹がちょこん、と座っている姿を。
その麻樹は少しだけ悲しそうに笑っていつも同じことを言った。
「優ちゃん。優ちゃんが幸せじゃなきゃ、私も幸せにはなれないよ……?」
と。その言葉だけを残して消える。
なんで……?
部屋にひとりの僕はどうやって幸せになるのかなんて、まったくわからなかった。
幸せになる方法なんて、忘れていたんだ。
何もかもどうでもいい。
麻樹がいない世界なんて、どうでも良かったんだ……。
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