第1章 1年前 

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麻樹を中心に生きていた僕から、麻樹がいなくなってしまえば、簡単に僕の人生なんか壊れるに決まっていた。 ドラマみたいに、 「ヒロインが死んでしまって、主人公は頑張って前向きに生きる!」 なんて話は絶対にないと思う。 窓を開けて、夜空を眺める。 麻樹は昔、お星さまになりたいって言っていた。 麻樹は、星になれたのかな……。 せめてそれくらい、叶えてやってくれよな。神様。 千羽鶴に込めた願いは、届かなかったけど。 神様なんているのかいないのか、わかんないけど。 僕は麻樹から誕生日のときにもらったアルバムを、1日に何回も開いていた。 見るたびに涙がとまらなくなって、最初のページ以外、見たことがいまだに一度もない。 いつも最初のページを開くと涙が溢れてきて、手が止まるんだ。 好きな人を思い出したくないときが、人にあるなんて思わなかった。 麻樹が生きているときは、毎日でも思い出すよなんて言ってたのに。 今じゃ麻樹のことを忘れられなくてつらすぎる。 涙なんて、簡単に出るし、毎日だってどうでもよくなる。 どうしたらいい? 誰か教えてくれ……。 触れることも、見ることも、話すこともできない恋人を忘れるには、どうしたらいい? 僕にとっては、世界中のどんな問題よりも難しい問題だった。
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