第1章 1年前 

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次の日、僕は久しぶりに制服を着た。 なんだか、制服がちょうどいい。 入学当時の春は、少し袖があまっていたけど、今ではちょうどいい。 ――時間は止まってなんかいない。ちゃんと流れてるし、僕も成長している―― 僕は、枕の下にある麻樹の写真に笑いかけて「行ってきます」とだけ言った。 久しぶりの外はなんだか晴れ晴れしていた。 「ってゆーか……寒ぃぃ……」 隣の麻樹の家を見る。 『優ちゃん、おはよう』 麻樹の幻覚を見るのは簡単だ。 なんたって、長年見続けてた姿だからな。 って、なんで自慢気なんだろうな。 「おはよ。麻樹。じゃ、行ってくるな」 麻樹に「行ってくるな」なんて言うのは、初めてだ。 だっていつもは……。 一緒に行ってたんだから……。 僕はひとりで学校に向かった。 ただ、昔みたいに笑って学校に行くことはできなかった。 麻樹と並んで見ていた風景をなるべく見ないように、下を向いて。 麻樹はなんだかずっと僕の後ろで、手を振っていた気がした。
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