第四章 フレッシャー王国

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エルが走る馬車の横にぴったりと馬をつけるとカーテンが引かれた窓が開き、姫が顔をのぞかせた。 「エルディア、もうすぐフレッシャーの領土に入るのよ。国を出るのは初めてでしょう?」 「はい。」 姫君に言われて初めてエルはハッとした。今まで生まれてこのかた自分の住む土地から外に出たことなど数えるほどしかない。国外など考えたこともなかった。 「我が家からずいぶんと離れることになるんですね。」 エルは来た道を振り返りながらつぶやいた。 「寂しい?」 姫君が恐る恐るきいてきた。エルを無理やりと言っていいやり方で連れ出したことに多少引け目を感じているらしい。 「少し寂しいです。でも、新しいスタートをきったようで楽しみな方が大きいですよ。姫様にお仕えできますし。」 「本当に?!」 太陽のようにパッと顔を輝かせてから 「姫様なんて呼ばないで。シシーでいいわ。私もエルって呼ぶから。」 話しているうちに丘を登り始め、ゆっくりとフレッシャー領土が見えてきた。 「我が王国へようこそ。エルディア王女。」 小さなささやきにエルは気付いていなかった。
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