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「つ…つ…疲れた。」
エルがやっとの思いでベッドに倒れ込んだのは真夜中過ぎだった。メイドに呼ばれて姫の部屋へ行けば騎士の制服をどれにするかと何度も試着させられ、武術を見たいとせがまれて軽い気持ちでギルと手合わせをしていたら後から後から手合わせを願いでる者があらわれ、やっと部屋に戻りお風呂へ案内されたら何人ものメイドが入浴を手伝おうとするしで心底疲れてしまったのだ。
「初めて異国にいらしたんですものね。長い間馬に揺られて、疲れて当然ですわ。」
先程からぴったりとそばを離れないメイドがいたわるように声をかけた。
(いや、むしろ到着してこの部屋に通される前の方が元気だったんだけど)
メイドはエルを椅子に座らせて髪をとかしはじめた。疲れきったエルはもうされるがままになっていた。
「黒い髪を見たのは今日が初めてですわ。何てお美しい髪なんでしょう。」
「私はギルのような栗色の髪に憧れるけどな。あなたの髪の色も好きだわキラキラ輝く金髪。お日様の光みたい。あなたなんて失礼ね。名前はなんというの?」
「まぁ、ありがとうございます。失礼だなんてとんでもないですわ。私はサラともうします。」
「サラ!」
「どうかなさいまして?」
「あ、いいえ。私のお母様と同じ名前だわ」
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