第一章 崩された王国

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その夜は国中のものが城へと集まり盛大なパーティーが開かれた。人々は皆、主役の登場を待たずにダンスや軽食を楽しんでいた。 カロフはそんな騒ぎを聞きつつカルティスの部屋へ向かった。 「カルティスさま、よろしいですかな?」 ノックをし、声をかけるとすぐに扉が開いた。 「やあカロフ。もう時間かな?」 カルティスは式用の白い衣装を脱ぎ先ほどと形は同じだが、青と銀の衣装にラグスト王家の紋、銀のユリを縫い込んだマントを身に付けていた。 「そうしていらっしゃると先代の国王陛下を見ているようですな。」 ニコニコと微笑むカロフにカルティスは自分の姿を見下ろす。 「そうかな、確かに母上譲りなのはこの黒髪だけだからな。他は父上に似てきているのかも。」 「本当に。やはり祝宴の前にこうして先代と語り合ったのがまるで昨日のように思い出されます。」 カロフの顔に少し影がさしたのをみてカルティスはその肩をたたいた。 「私も父上たちに負けない夫婦になってみせるよ。カロフは私たちの子供の世話に追われる毎日を送ることになるさ。」 「やれやれ、いつになったら休ませてくださるんですか?」 そう言ったカロフの顔は喜びに満ちていた。
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