第五章 そして王女は騎士となる

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「あ~やれやれ。終わってホッとした。」 エルが儀式の衣装のままのんびりと庭園で伸びをしていると向こうからシシー姫とギルがやってきた。 「エル、この城にいるのは今夜一晩だけだから今夜もまた薔薇の間を使ってね。あなたがあの部屋に感動していたとロアン先生から聞いたわ。」 エルは口元をひくつかせながら後ずさった。 「ロアン先生…あれ?今夜一晩ということはシシー様が普段暮らしていらっしゃるのはこの城ではないのですか?」 「あら、まだ言ってなかったかしら?私が普段暮らしているのは東の離宮なの。この城へは公式行事があるときにだけ帰ってくるのよ。」 「そうだ。確かにお聞きしました。申し訳ありません。」 慌ただしい毎日の中、チラッと聞いただけの話を頭にとどめておくのはとても難しいことだ。 「私ももっとキチンと話しておかなかったから。」 姫は落ち込むエルを珍しそうに眺めながら笑った。
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