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「カロフさま、ご昼食でございます。」
ノックの後にサラの声が聞こえ、ワゴンを引きながら彼女が入ってきた。
カロフは目を通していた資料を下に置き、困ったような表情をうかべながら彼女を見た。
「サラ嬢、わざわざ運んで下さらなくても今、食堂へ向かおうと思っていたところですよ。」
「そのようなお言葉を昨日も一昨日も聞きましたわ。でもカロフさまはいつもお運びしない限りお昼を抜かれてしまわれるんですもの。お体に悪いですわ。」
サラはさっさと資料をどかさせると昼食を広げた。
「私ぐらいの年になると日に二度の食事で十分なんですよ。」
「またそのような事をおっしゃって、お運びすればきれいに召し上がるのに。」
カロフは結局サラの勢いに押されてナイフとフォークを手にとった。
「私のような老いぼれのそばにいても良いことなんて一つもありませんよ。」
食後の紅茶をすすりながらカロフが言うがサラはそっと微笑むだけだった。
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