第六章 東の離宮

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朝もやのたつなかエルは一人城の庭園を歩いていた。あと一時間もしたら姫が目覚めるだろう。そうしたら自由な時間は終わりだ。昨日の庭園での出来事を思い出しながらぼんやりと花についた朝露をぬぐった。 「明日からしばらく会わなくなるな。」 「え?」 ギルはじっと自分に視線を向けた。彼の瞳に自分が写っているのが分かる。 「東の離宮に戻るのは姫君直属の部隊だけだ。王立騎士団、第十五班から十七班のみ。」 「あなたはいつも姫君の側にいたから離宮へ行ってもそうなんだと思っていました。」 「それは私が彼女の…、いや。」 ギルは不自然に口を閉ざした。 「彼女の?」 「彼女の騎士が決まるまでの代役をしていたにすぎないよ。」 明らかに最初に言おうとしたこととは違う言葉にエルは首をかしげたのだ。
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