第六章 東の離宮

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エルはフードの男に近づくとお辞儀をしてから話しかけた。 「姫君からあなた宛にこれを預かって参りました。」 男は近づいてきたエルから身を隠そうとするかのようにちぢこまっていたが、恐る恐る手紙を受け取った。カサカサいわせながら手紙を開き中を読む。 エルは男が読み終えるのをじっと待った。 手紙は短いものらしくチラッと目を通すと彼は深くため息をついた。 「どうやら彼女にはなにもかもお見通しらしいな。」 じっと待っていたエルはその声をきいて驚いた。ゆっくりとフードをぬいだ男は先程見送りの中に見かけなかったギルだったのだ。 「ギル。何故こんな所に?見送りの人たちの中にいなかったからおかしいと思っていたんですよ。」 「いないことに気付いていたのか。」 ギルは少しうれしそうに答えた。
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