第六章 東の離宮

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「さあ、そろそろ皆を追いかけたほうがいい。」 ギルはウィンにまたがるエルに手を貸し、旗をどうやって固定するか教えた。 「またすぐにお会いできますよね。」 馬上からたずねるとギルは力強くうなずいた。そして手綱をにぎるエルの手をそっとほどき握った。 「頑張れよ。側にはいられないがいつも君をお……応援してるから。」 「はい。必ず姫君をお守りします。」 ギルはまぶしそうにエルを見上げ、手を離す間際にそっとその手袋をはめた手にキスをして馬から離れた。 エルは一瞬キョトンとしていたが一気に顔を赤くして、ギルの顔も見ずに 「で…は。」 と声をかけて走り去った。 待ちくたびれていたウィンはうれしそうに走るのを楽しんでいるが、その背にまたがる人物は楽しむどころではないようだった。 残されたギルはみるまに小さくなる黒髪をなびかせた背中を見えなくなるまでじっと見送っていた。
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