第六章 東の離宮

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ギルは風のように去っていってしまったエルディアを思い、深くため息をついた。 「手に入らないものは初めから望まないことにしているのに…」 城へと戻りながらギルは二回目のため息をついた。幼い頃から決められていた道に逆らおうと思ったことは一度もなかった。与えられた道筋の中で精一杯の努力をしていけば良いと思っていた。 「俺はもう彼女以外の人を愛することは許されないというのに。」 ギルは道に沿って整然と並んでいる木立に寄りかかり片手で目を覆った。そうしていても浮かび上がってくるのは黒い髪の少女ばかりで彼は眉間にシワをよせ、三回目のため息を吐き出した。
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