第六章 東の離宮

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「カイトさん。彼女にもっと合った愛情表現をしてあげた方が良くないですか?」 エルは去っていくセスを見送りながらつぶやいた。 「俺もそうしようとは思ってるんだが、彼女を見ると、もうどうしてもからかってしまうんだよな。反応が可愛くて。」 「あの堅物を可愛いなんて言ってる奴はお前ぐらいだよ。」 タイタスはやれやれとため息をついてもといた場所へ戻って行った。 カイトは面白そうにエルを眺め、すぐ隣にやって来た。 「セシリアは堅物じゃないよ。意地っ張りの負けず嫌いなんだ。君のこと気に入ったみたいだけどね。」 「へ?」 その言葉に面食らいながらエルもカイトを見つめた。濃く髭をはやしているので年上に見えるが髭がなければ案外まだ若そうだ。 「本当の堅物ってのはギルディオン隊長みたいな人のことを言うのさ。」 「堅物…」 思い返してみれば確かにそうかもしれない。クスッと笑った彼女をカイトは不思議そうに眺めている。
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