第六章 東の離宮

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「美味しくない?」 突然きかれてエルは驚いてしまった。彼女の分の食事はもうほぼ終わりそうなのにアメリアはまだほとんど残っていた。これでエルが先ほどの質問をしたのならまだ理解できるのだが… 「とても美味しいです。ほら、もう食べ終わってしまいそうです。」 「おしゃべりがないと美味しくないかな…って」 アメリアは小さな声を絞り出すようにして話した。 「アメリアさんはおしゃべりが好きなんですか?」 きかれて困ったように首を横にふる。 「私は話すのは好きです。でも静かに食事するのも好きですよ。お腹も心も満たされていくのがちゃんと実感できる気がするんです。」 エルはパンの最後のひとかけらをポイッと口へ放り込んでニコッと笑って見せた。 「不思議な人。」 アメリアはスープの器を見下ろしながらつぶやいた。
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