第六章 東の離宮

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「遊び相手の男の子?」 「はい。サミュエルといってすぐ近くに住んでいたんです。彼と遊んだおかげですっかりおてんばになってしまって。まぁ結果的にそれに救われたんですが…」 アメリアはじっとエルの話しに耳をかたむけている。 「十歳になったばかりの秋に何年か前から病に倒れ寝たきりだった祖父が亡くなり、冬には母が倒れてしまいました。 そこで離れて暮らしていたおばが自分の娘、私にとってはいとこですね。を連れて我が家に移り住みました。そして、私は男の子として暮らすようにと決められたのです。」 「え?男の子として?」 アメリアは口へ運ぼうとしたパンを膝の上に戻した。 「はい。」 「何故?」 「さぁ、なぜなんでしょう。分からないですね。」 「聞かなかったの?」 「そうですね、聞くひまもなかったというか…ある日寝て起きたら私の部屋にあった女の子らしいものや服は全て消えていて。入ってきたおばにきいたらそう言われたんです。」 「そんな…」 「長く伸ばしていた髪も短く切られて。その日から私はそれまでの贅沢な暮らしから離れたんです。」 「そんなめにあっていたなんて…」 「でも暖かい寝床もありましたし、食事だってきちんともらっていましたよ。遊び暮らしていた時間に与えられた仕事をするようになり、同時に剣術や武術を教わり始めました。いとこの身を守る為に。」 「いとこの身を?」 「彼女は二度誘拐されそうになったんです。ですから私はその護衛役を命じられました。」
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