第一章 崩された王国

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旅立ちからしばらくして、リディアたちが無事にロイド王国についたとの報告をうけたが、2ヶ月、3ヶ月と経ってもリディアは帰ってこない。 「やはり体調をくずしたのだろうか?こんなことならばもっと強く引き留めるんだった。」 カルティスは心配のあまり仕事に手がつかない様子だ。 「先週、使者を送って様子を見に行かせました。今頃はロイド王国に到着しております。」 カロフはカルティスを励ますように声をかけながらも自身も不安を隠せないようだ。 翌日の深夜、ひどい嵐の中、カルティスは跳ね橋が下ろされる音で目覚め、手早く着替えると部屋を飛び出した。 「一体何事だ、このような夜更けに。」 家来の一人が慌ててカルティスの前にひざをついた。 「先週送りました使者の片割れが急ぎ陛下にお会いしたいと申しております。」 カルティスの前にずぶ濡れになった使者がひざをついた。 「申し上げます。我々はロイド王国へ向かう途中、追っ手に追われながら逃げ帰ろうとなさるお妃様ご一行に出会い、お守りしつつこの地を踏むことができました。お妃様は都内の宿屋にかくまってもらい、私は急ぎ参上いたしました。」 「追っ手だと、一体誰だ?」 カルティスはつぶやきながらも腰に剣を差し、せきたてるように使者と共に雨の中、馬を駆けさせ、慌てて家来たちが後に続いた。
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