第六章 東の離宮

46/49
前へ
/845ページ
次へ
「私は彼が大好きだった。ずっと側にいたかった。でも彼がリド一族だということも寿命が私とはまるで違うことも知っていた。私はリド一族の血を全く受け継いでいなかったから。」 悲しそうな表情をするアメリアにエルはおもわずその手をとって握った。 「あなたに分かるかしら、大好きな愛する人の目の前で自分だけがどんどん年をとってしまう。自分だけが老いていく。 それを知った時、私は目の前が真っ暗になったわ。どうしても年をとりたくなかった。彼と同じになりたかった。おろかにも私は彼にそんな不安を一言も打ち明けずに他の魔術に頼った。住んでいた土地の外れにある森の魔術士のもとをたずねた。魔術士はロアンの血二三滴と引き換えに私を不老長寿にしてやると言った。私は二三滴ならと、彼の指先にわざとブローチの針を近づけて傷つけた。急いでハンカチで彼の血を止めて、それを魔術士の元へ持っていったの。」 「魔術士はあなたに魔法をかけたのですか?」 エルの問いかけにアメリアは首をふった。 「彼にはそんな力はなかったわ。彼はロアンの血を手に入れてさっさと私を消してしまおうとした。ここに剣を突き立てたの。」 豊かな長い髪を持ち上げてアメリアは首にある小さなアザを見せた。 エルは小さく息を飲んで話の続きをまった。
/845ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4125人が本棚に入れています
本棚に追加