第一章 崩された王国

10/24
前へ
/844ページ
次へ
使者の案内で宿屋に着くとカルティスは急いでリディアがいる部屋へ向かった。 「リディア、大丈夫か?」 ノックもせずに飛び込んできたカルティスにリディアはベッドの上から多少、青白いがいつもの笑顔で迎えた。 「ただいま戻りました、陛下。」 カルティスに続いて部屋に入るべきかと迷っている家来たちを後から追ってきたカロフがてきぱきと指示を与え、宿屋の警備にあたらせる。 「カロフ様!」 突然後ろから声がかかり、部屋を二人きりにしてあげようと出てきたサラが駆け寄った。 「サラ嬢、一体何があったのですか?」 カロフが問いかけるとサラはこらえていた涙を流しながらカロフの胸にしがみついた。カロフは戸惑いながらも彼女の背中をなで、落ち着くのをまった。 その光景はまるで父親にすがりつく娘にしか見えず、悪く言えば祖父と孫のようだったが、ようやく彼女と距離をとろうとする彼の心が解け始めた瞬間だった。
/844ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4125人が本棚に入れています
本棚に追加