第七章 沈めた記憶

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「さて、シシー様。先週までの授業内容を覚えていらっしゃいますか?」 暖かな光が射し込む午後。ロアンはシシーが座る机の前を行ったり来たりしながら彼女の返答を聞いている。 何度も共に授業を受けているエルはもう慣れたが、初めは一切ノートをとらせないロアンのやり方に驚いた。 「先生は、内容は全てここに書き込むようにと言っているのよ。」 驚いているエルにシシーは頭を指差してみせたものだ。 「はい。よろしいですね。では、この内容についての論文は書いてきて下さいましたか?」 エルは持っていた巻き紙をロアンに渡した。 彼はそれを笑顔で受けとると指を一振りして消してみせた。 「これは今夜読ませていただきます。さて、今日は外交の項目の続きを始めましょうか。」 シシーが学んでいる勉強は驚くほど難しい内容で、エルにとっては聞いたこともないようなものが多かった。 それをシシーが全て頭に納めているのは本当に驚きだ。
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