第七章 沈めた記憶

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ロアンの授業が終わると、夕食までの間は休憩となり、シシーにせがまれて二人は庭園へ向かった。 「シシー様はご立派ですね。たくさんの授業をこなしていらっしゃって」 エルが感心しきっていうと彼女は照れたようにスキップをしながら答えた。 「エルは聞いていて楽しい?」 「楽しむ余裕はまだないですね。」 苦笑しているとシシーが顔をのぞきこんできた。 「でもね、例えどんなに自分には必要なさそうな話しでも、頭に入れておけば役立つときがくるだろうって先生はいつも言うのよ。」 「そうですね。私は職務をこなしながら勉強もできて幸せ者です。」 答えながらエルは今更ながら自分の恵まれた立場に気が付いた。一般市民が受けられる知識などたかがしれている。今、自分は姫君が受ける高い知識を共に学んでいるのだと。 「私にはもったいないくらいです。」 エルの言葉が聞こえていないのか、笑みを浮かべたシシーは習ったばかりのステップを踏みながら花の間をヒラヒラと飛び回っている。
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