第七章 沈めた記憶

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時間は春に吹くきまぐれな風のようにあっという間に過ぎていく。足を止めてじっとその風を感じ、運ばれてきた匂いを嗅ぎとる者はごくわずか。ほとんどはただ日々の忙しさにばかり気をとられ背中を丸めて歩き続けるだけだ。 ロアンは城の細長い窓からぼんやりと庭を散歩する二人の少女を見下ろしていた。 金と黒の頭が並んでいると昔に戻ったような錯覚に陥る。 「君のご両親を見殺しにしたのは私だと知ったら、あなたはなんと言うんでしょうね。姫君。」 ひきつった笑顔を浮かべながら彼は廊下の奥へと消えていった。
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