第七章 沈めた記憶

8/48
前へ
/845ページ
次へ
夜になり、城の唯一の出入口である跳ね橋もあげられ辺りは静寂に満ちていた。エルは自室のベランダに立ち長くなりはじめた黒髪をとかしながら空を見上げていた。 遠くに城を取り囲む湖が松明の光をうけて輝いているのがみえる。 エルはぼんやりと遠くにいるサラとカロフのことを考えていた。 「二人とも元気かな…」 「元気すぎるほどだよ」 突然声がしてエルはさっと身を隠した。 「誰?」 答えはなくベランダの手すりに一羽のカラスが舞い降りた。 「声が聞こえるってことはだいぶ魔力が戻ったんだね。」 エルの目にはカラスが片目をつぶったように見えた。
/845ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4125人が本棚に入れています
本棚に追加