プロローグ

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凍りつくような寒い冬が終わり、暖かい春がやってきた。 毎年、春を心待ちにしている国民たちも今年は例年以上に心を踊らせている。 すべての道から街灯、家々の壁や窓にいたるまで綺麗にみがきたてられ、花やリボンがそこ、ここに飾られまるで街全体が着飾ったご婦人のようだった。 人々は喜びを隠せない様子でそわそわしながら毎日、どっしりとした立派な古い歴史ある城の塔を見上げた。城から遠く離れた場所に住む者もいつ知らせが舞い込むかと首を長くして待っている。 しかし、誰よりも落ち着きなく知らせを待ち続けている者がその城にいた。 闇よりも深い黒髪と日に焼けた褐色の肌。驚くほど高い背、長い手足は持つ人が違えばこっけいに見えただろうが、美しい身のこなしが全て打ち消していた。 それでも外見だけではこの者、ラグスト王国の若き国王カルティス・ラグストの魅力の半分も伝わらないだろう。
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