第七章 沈めた記憶

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「最近、疲れた顔をしている。」 「そんなことはないですよ。」 二人は互いに前を向いて歩きながら言葉を交わす。 「昨日、メイドのサラから手紙を渡された時だけ笑顔になっていたが…」 「ああ、昨日ギル…ギルディオン隊長から手紙をいただいて」 思い出して笑みをこぼすエルをニコルはじっと見つめていた。 「あの方のお心を開くとはさすが姫の一の騎士。」 ニコルの言葉にエルは首をかしげた。それに気付いているかのように彼は話しつづける。 「ギルディオン様は人と深く関わることをさけているように見えていたから」 「さける?一体なぜ?」 ニコルは足を止めてエルを見下ろした。エルも顔をあげてじっと彼を見上げる。彼の瞳はためらうようにさまよっている。 「教えてください。」 「ああ、だがこれは俺の個人的な見解だということを頭に入れておいて欲しい。」 彼の言葉にエルは大きく頷いた。
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