第七章 沈めた記憶

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「フレッシャー王国第二王子。それがギルディオン様の生れついた時からの肩書きだ。」 チラリとエルの反応を確かめながらニコルは話しを続ける。 「知っているかもしれないが、ギルディオン様はかなりの難産の末にお生まれになった。イヴ王妃様も命を落としかけたほどの難産だったらしい。王妃さまがやっと体調を戻すころに、今度は城内に原因不明の流行り病が広がり始めた。何人もの死者が出て、第一王子のジョナス様もこれに倒れた。命は取り留めたが左手に麻痺が残ってしまった。これを知って当時の乳母長が責任を感じて二人の王子付きの乳母とともに自ら命を断った。」 話しが進むにつれてエルの眉がひそめられていく。 「人々は心ない噂をたて始めた。第二王子が生れてから悪いことばかり起きると」 「バカバカしい。」 吐き捨てるように言うエルにニコルも大きく頷いた。
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