4125人が本棚に入れています
本棚に追加
「知らなかった。」
エルはニコルの背中を見送ってから小さくつぶやいた。
今聞いた話しが何故こんなにも胸に突き刺さるのかも分からず、苦しそうにニコルに背を向けて歩きはじめた。
ひと足進むにつれて心臓の音が高まる。
(悪いことばかり起きる。自分に関わった人間は不幸になる。)
視界が曇り、見えている世界がぐるぐると回り始めた。吐き気と頭痛が一気に遅いかかり、エルは片手を壁につき反対の手で目をおおった。そのままズルズルとしゃがみ込む。
(不幸になる。
崩壊した。
今は亡きラグスト王国。
ラグスト王国。)
「ラグスト王国…」
黒い闇に包まれる瞬間。誰かの大きな手に背中を支えられた。エルは霞んだ目をこらしながら顔を上げる。
「ギ…ル?」
声は闇に吸い込まれていった。
最初のコメントを投稿しよう!