第七章 沈めた記憶

30/48
前へ
/846ページ
次へ
「あれは黒いワンピース着てるし、9歳。まだサーシャたちが家に来てなかったけど、おじいさまがなくなってすぐの頃。」 「あれも見ろ。」 クロが庭の方を見させるそこではエルがサラのスカートの陰に隠れ、サムがいやそうに挨拶をしているのが見えた。 「7歳。初めてサムに会った日」 クロは先程から気にしている木のてっぺんへ舞いあがった。 「じゃああれはいくつだ?」 花を摘んでいる自分がいる。 「7歳ぐらい?」 「じゃああれは?」 サラがダンスの手ほどきをしてくれている。 「7歳ぐらい…」 「あれは?あれは?あれは?」 問い掛けるたびに木が縮み、声が近くなってくる。しかし自分の姿は全く変わらない。 黙り込んだエルに楽しそうに話しかけてくる。 「お前の7歳ずいぶん長いんだな。」
/846ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4125人が本棚に入れています
本棚に追加