第七章 沈めた記憶

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「あれって…あれって…私?!」 エルの悲鳴に近い声が辺りに響くが、幼いエルには全く聞こえていないようだ。 「そうだよ。黙って見てろ。」 不機嫌そうな声に、続けて飛び出しそうだった言葉は押し込められた。 「さあ、準備できたっと。」 少女は泉の縁に並べられた12本のロウソクを満足げに眺め、ひときは大きなロウソクをロウソクたてに取り付けて持ち手をにぎりしめた。 「なぁ、やっぱり…」 「静かにして。心を落ち着けなきゃいけないんだから。」 震える小さな手で火をともしていく。
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