第七章 沈めた記憶

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「だめよ……」 エルはふらふらと幼い自分に近づこうとした。 「だめ、やめなさい。」 ロウソクの明かりに包まれながら目を閉じて言葉を紡いでいる自分に手を伸ばしたとき、ロウソクの明かりを映していた泉の表面が波打ち始めた。 「やめなさい!」 手を伸ばすが、触れることができない。 少女は時折、苦しそうな表情をうかべながらもやめようとはしない。 泉の波はだんだんと激しさを増し、ロウソクの明かりを波の中に取り込んだかのようにオレンジ色に輝きながら膨らみはじめた。 「やばい、エル。やめろ!!」
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