第七章 沈めた記憶

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クロスは慌て翼を少女の口に当てたが、間に合わなかった。 人影はゆっくりと水柱をくぐり抜けて姿を現した。 「姫さま。」 ぼんやりと霞む姿は若い兵士のもので青白い顔には微笑みをうかべている。 「あなたは?」 少女は不思議そうに自分に手を差し出す兵士を見る。 「エルに近づくな!」 クロスが兵士の手を払いのけると同時に水柱にはまた人影が現れた。 「だから言っただろ。お前はまだ自分の魔力の強力さに気づいてないんだ。制御のしかたは未熟だし。そこいらじゅうにいるラグストの兵士を呼び寄せちまったらしい。」 話す間にも兵士の数がどんどん膨れ上がり少女の顔も青ざめ始めた。
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