第七章 沈めた記憶

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いっこうに受け取ろうとしないエルにしびれを切らして彼女はエルの額に両手をかざした。あまりの眩しさにエルは目をつぶる。 光りはまるで頭の中を走り回るかのようにぐるぐると駆け巡り、エルはめまいを起こしたように気分が悪くなった。 「少し横になりなさい。」 言われるままに地面に横たわり、右腕で両目を覆う。 「大丈夫か?エル。」 しばらくしてからカラスが遠慮がちに尋ねる。 「羽を広げたところが十字架みたいだからクロス。そうよんでたんだね。」 エルの言葉に答えるようにピョンとその腕に飛び乗る。 「昔も今も、まともに呼べたためしがない。」 「忘れててごめんね。クロシェ-ヌ。」 「いいよ、クロスのままで。」 左手で体をなでられ、うれしそうに答えた。
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