第七章 沈めた記憶

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「あなたには伝えなければいけないことがあります。」 少し遠ざかっていた女神が音もなく滑るように近づいてきた。 「私はクレア。あなたの祖母にあたります。」 エルはゆっくりと起き上がり、彼女を見上げた。 「私には闇の力が備わっていました。あなたと同じく。」 「闇の力?」 「あなたの力を眠らせている間、力を借りたこともありました。あなたの力はとても強大で危険なものだった。サンドラの心に忍び込み、髪を切らせたのもそのため。」 「髪と魔力と関係が?」 首をかしげるエルの前にクレアはしゃがみ込んだ。 「長い髪の毛は昔から魔力を高めると言われています。あなたも髪が伸びはじめてからクロスの声が聞こえ始めたでしょう?」 そういってエルの髪を手でとかす。彼女が触れるたびに混乱した頭が静かに落ち着きを取り戻していくようだ。
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