第七章 沈めた記憶

44/48
前へ
/848ページ
次へ
黒い十字架のような姿になったと思うとクルクル回転しながら下りてくる。地面に足が着いたと思った瞬間。そこにカラスの姿はなかった。 「う…そ…」 「うそじゃねーよ。」 居心地悪そうに頭をかく。 「え、だって…サム…」 「そうだよ。気づかないんだもんな~全く。」 エルは立ち上がって目の前に立つ。 「どこから見てもサムだ。」 「当たり前だ。同一人物だからな。」 二人の様子をうれしそうに眺めていたクレアも近づいてきた。 「だいたいクレアが俺を男の姿になんかするから。」 「男じゃないと違和感があって目立つと思って。なにしろその口調ですものね。」 うれしそうに笑っていたクレアが突然ハッとして顔を空へ向けた。 「もう時間がないわ。最後にあなたに見せなければいけない。」 彼女が両手を広げると三人は燃え盛る城の前にいた。 「これ、東の離宮?!」 エルの叫びにクレアは首を振った。 「いいえ、これはラグスト王国の城。あなたの生まれた場所。」 彼女の言葉でエルはサラの言葉を思いだした。
/848ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4127人が本棚に入れています
本棚に追加